TOKAIDO

2019

2017年冬東京から京都までの道のり約492kmを徒歩で歩き、
江戸時代の浮世絵師、歌川広重の「東海道五十三次」の絵の中で描かれた現代の風景や宿を探し、広重が旅をした足跡を辿る旅に出た。

そもそも私は2004年に故郷から東京まで徒歩で歩いたことがある。
それは私が大学を卒業し写真家という道を志すという決心をした時に衝動的に選んだ最初の旅であった。

写真を始めるきっかけが四国のお遍路道を歩いたことがきっかけであったし、
歩くという行為は自分を知る為に必要性を強く感じていたこともあるからだ。
兵庫県生まれの私からすると当時東京という場所は非常に大きな存在であり見えない壁でもあり、 大海原に飛び込むといった自分にとっても挑むべき対象でもあった。

約492キロという長い道のりを一歩一歩これから待ち受ける様々なできごとを想像する時間であり、 その後の人生にとってもその経験は貴重なものとなった。
そして13年越しに、22歳だった自分が歩いた道を振り返るように広重の絵を手に歩いた。

趣のある浮世絵の中の世界とは大きく変わってしまっている現代の東海道という道のあり方に少々落胆することもあったし、人の道というより車の為の道になっているという印象も強くあった。

普段慣れ親しんでいる新幹線の移動速度285キロから時速4キロの違いを設け、
約一ヶ月間歩き続け数え切れないほど新幹線に追い抜かれ、
速度という概念を強く身体的に感じながら、京都という目的地を目指した。
道中宿々を辿りながら、 東京への一極集中や地方の人口減少など様々な日本が抱える様々な問題点についても考えらざるを得なかったが、東海道という道の変化に気づくと同時に、当時から現在に至るまでの自身の変化を振り返る行為でもあったのかもしれない。

全長34メートルの長さの巻物には東海道の今が写真で記録されている。

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