Day Drawing

2025

“Diorama Map”シリーズで都市という構造体を過去13年間に渡たり歩き続ける中で、ある一つの土地が年月を経てやがて一つの都市に至るには、様々な物が行き交い、人間の日々の歩行が有機的に堆積することによって構築されているということを実感した、それと同時に人間が“移動する”という根源的行為そのものに興味を抱くようになった。Day Drawingは、そのように無数に張り巡らされた行為の集積の一つといえる自身の日々の移動に注目し、それを写真として可視化することを試み始めた作品である。

2014年11月から現在に至るまで日々継続的に自身の毎日の移動のデータをGPSに記録している。Day Drawingでは、それらの日々の記録の中から様々な場所や日時を選び出し、ある一日の移動を紙にトレースした線に沿って一点、一点手で小さな無数の穴を開ける。そして穴が空けられた紙に暗室の中で光を照らし、暗闇の中でその穴から漏れた光を写真に撮影する。GPSデータという極めて客観的であり、科学技術が発達する前までは神のみが知ることの出来ると考えられていた視点を用いることによって、自らの身体行為を一つの造形=ライン(線)として可視化する。写真に写し出された光の線を構成する無数の光の点の一つ一つは自身の「歩く」という一瞬一瞬の行為、あるいは一歩一歩の歩みの集積と同等である。また、一日の移動という時間軸を持った身体行為そのものを線に置き換えて可視化し、抽象化することによって、個人的な身体行為の記録をある種の普遍性を持った視覚表現に変換している。俯瞰的視点を用いることよって初めて認識する事の出来る"移動"という自身の身体行為は、地球上に線をドローイングする行為とも言える。

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