FL350

2025

私にとって旅は、必ず上空を経由する行為である。
飛行機に乗るときはいつも窓側の席を選び、航路のあいだ中ずっと外の景色を眺めている。
雲の切れ間から見える大地には、どこかの国の、自分とは異なる場所で暮らす人々の営みが確かに存在している。

そうした風景を見つめることこそが、旅の始まりと終わりを形づくり、私にとって「旅」というものを成立させているのではないか――そのように感じてきた。
約10年にわたり、高度約35,000フィートから見た風景をカメラに収めてきた。
そこに写るのは「いつかの、どこかの、だれかの」大地の断片である。

それらをランダムに組み合わせ、一つの画面へと編み直すことで、私は「世界の表皮」としての新しい風景をつくりあげた。

それは個人的な記憶の地図であると同時に、私たちの誰もが持ちえない「見えない地球儀」のようでもある。

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A floating tree

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Day Drawing