A floating tree
2023
火山の稜線に広がるブナの群生地や苔生した皮子平の山肌を歩き火山噴火によって出た噴出物や土地の歴史から川の始まりを想像し、山から一本の木を切り出し、旅の道具である舟を作ることから始まった。多くの地元の有志達と共に丸木舟を一から制作し川を下るという半年以上にも及ぶ一連のプロセスは、山や良質で豊かな清流に礼賛する時間でもあり、また祈りにも近い神聖な感覚も得る時間でもあった。しかしそれと同時に容易に近づくことを憚れる川の怖さも感じた。川の始まりから大海の駿河湾まで、一本の木と共に移動したこの旅を通して、様々な支流からなる川の境目や海へと流入するまでの速度や水質、船から見上げた景色の変化を身体的に捉えた。